ソウル紀行 -2019年-

ソウル紀行

2019年7月
鷹觜 義哲
今年 6 月、2年前にケニア旅行の際にお世話になったナイロビ在住のキムさんの写真展がソウルで開催されるのを機会に、NPO 法人ワイルドライフ代表の菊池さんに同行して 5 日間のソウルの旅、私にとっては初の韓国訪問となりました。

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  6月17日成田空港 12 時発のティーウェイ航空仁川国際空港行TW202便でソウルへ、成田空港ではLCCは第 3 ターミナルからの出発と思いきや、第 2 ターミナルからの出発、搭乗カウンターFは一般の広いフロアーではなく階段の横にある片隅のLCC専用のカウンターでした。
搭乗カウンターで 10 時に菊池さんと待合せ、少し並びましたが搭乗手続きを済ませ、定刻に成田空港を出発、LCCとはいえ、食事のサービスが無いだけで座席の広さも問題は無く、2時間余りの快適なフライトでした。
予定通り 14 時 30 分に仁川国際空港に到着、初の韓国入国となりました。空港では早速両替、キオスクで日本のスイカに当たるT-moneyカードを購入、券売機でチャージし地下鉄でソウル駅経由、明洞(ミョンドン)駅へ向かいました。
キャッシュレスが日本より進んでいるといわれている韓国、T-moneyカードはタクシー代、買い物等に利用し、なかなか使い勝手の良いカードでした。
ホテルは明洞駅から徒歩20分程のところ、街並みを見ながらぶらぶら歩き、17時頃にホテルにチェックインしました。
ホテルは Booking.com で予約した Nine Tree Premium Myoung Dong Ⅱ、明洞の繁華街から少し離れていますが、地下鉄の乙支路3街駅にも近く、新しいホテルで清潔でリーズナブル、なかなか良いホテルでした。部屋に落ち着き、早速キムさんに連絡、会場のギャラリーへタクシーで向かうことになりました。
ギャラリーはタクシーで10分程のところ、多くの伝統的な韓屋が並ぶ仁寺洞(インサドン)の Grimson Gallery、歴史を感じさせる文化的な雰囲気のある街並みの中の素敵なギャラリーでした。私とキムさんはケニア以来、2年ぶりの再会、早速、展示している写真を鑑賞しましたが、これまでの野生動物がテーマではなく、The Face というまさにケニア人の顔をメーンにした写真展でした。黒のバックに黒シャツを着たケニア人を並ばせて撮影し、顔だけを浮き上がらせた写真がメーンで、いろいろな表情があり五百羅漢にも似た独特な雰囲気が醸し出されていました。アフリカの黒人に内在する喜怒哀楽が表情に現れていて、黒人が被った歴史を考えさせられる写真展でした。写真展の詳しい考察については、別掲の菊池さんのレポートを参照してください。
その夜はキムさんの友人が集まり総勢7人でソウルの街に繰り出し、賑やかに歓迎会を催してもらいました。ソウルの夜の街を散策し、海鮮料理屋、焼き肉屋をはしご、店内で周りを見渡したら現地の人はほとんどがジンロのチャミスルをストレートで飲んでいて、私も皆に倣い久しぶりにジンロを味わいました。チャミスルはアルコール度数が18度もある強いお酒ですが、韓国料理にはストレートがばっちり、滞在中は毎晩チャミスルのストレートにはまっていました。3次会はホテルのバーへ、屋上にあるテラスで遅くまで懇談しました。

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  ソウル 2 日目は市内観光、名所旧跡巡りです。先ずは日本大使館前の従軍慰安婦像にご挨拶、慰安婦像は日本大使館の前の通りの向側で日本大使館を向いて椅子に鎮座していました。隣にはテントがあって、中に見張りと思しき人がいましたが、テレビで報道されるようなデモ隊は無く、実に静かな情景でした。日本大使館は報道の通り、建築許可が下りずに解体された状態、更地のままで POLICE の車両が周りを囲み警備しており、日韓の外交問題の根深さが感じられました。
  それからは李朝 500 年の歴史探訪、昌徳宮(チャンドックン)、民族博物館、青瓦台、故宮博物館、景福宮(キョンボックン)を歩いて巡り、朝鮮民族の歴史に触れることが出来ました。王宮の建物はどこかで見た景色だと思ったら、奈良にある寺院とそっくり、中国から朝鮮、日本へと伝わった文化が感じられる景色でした。

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  午後 3 時には Grimson Gallery で昨夜お会いしたチョンさんと待ち合わせ、日本語が話せるチョンさんの友人ミョンさんが同行して南山公園のソウルタワーへ向かいました。
ソウルタワーはソウルのランドマーク、山麓からケーブルカーで南山公園ギル(ナムサンゴンウォンギル)へ、ソウルタワーにはエレベーターで登り 360 度のソウルの街の眺望を楽しみました。残念ながら小雨の天気で眺望は今一でしたが、市の中心を横切る漢江(ハンガン)の流れに相まって、緑の多い丘陵に囲まれたソウルの町並みに、ごみごみした街並みを思い描いていたソウルのイメージがすっかり変わってしまいました。
夜はキムさんとホテルで待合せ、キムさんの案内でフグ料理店へ、韓国でも高級料理といわれているふぐチリ鍋と締めのオジヤに大満足、すっかりジンロの味に馴染んでしまった夜でした。
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  ソウル3日目は、事前に予約していた板門店ツアーが、国際情勢や南北関係などの現地事情のためという理由で急遽催行中止になってしまいました。
思えばその時期には中国の習近平主席が平壌を訪れており、後にトランプ大統領が板門店で金正恩委員長と会談する等、中止の理由がそのためだったのかと、後々納得出来た次第でした。予定を変更して、前日は李朝500年の歴史を勉強したので、その日は日韓併合から韓国建国までの歴史を勉強するために、ソウルから約 100km、ローカル電車とタクシーを乗り継いで約 2 時間、天安市にある独立記念館を訪れることにしました。
広大な敷地の中、主には日韓併合から大韓民国建国までの歴史が 7 つの展示館に展示されていました。
今回の韓国訪問前に、日本と韓国の歴史について数冊の本を読んで来ていたので、伊藤博文を暗殺した安重根、韓民族の最大の抗日闘争だった三・一運動、旧日本軍慰安婦等、歴史の事実は事実として受け止めることが出来ました。独立記念館は、韓国という国が独立を勝ち取るためにどのような活動を行ったのかがテーマの展示で、平日にも拘わらず多くの高校生や大学生と思われる学生たちや韓国軍の兵士たちが訪れていました。
今日の日韓問題の原点がここにあるわけで、日本人も訪れるべき場所だと思いました。
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その夜もキムさんの案内でホテルの近くのタッカマリンの店へ、鳥を丸ごと一羽入れた鍋を囲みジンロで乾杯し、その後ホテルのバーで懇談、キムさんの写真に対しての思いをじっくり聞く機会となりました。午後 11 時頃キムさんと別れてからソウルの夜を満喫しようと、タクシーで東大門(トンデモン)へ、深夜まで営業しているという夜のソウルの雰囲気を味わい、午前様でホテルへ帰還、よく歩き、よく飲み、よく語り合った一日でした。

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  ソウル 4 日目、昨夜は 1 時過ぎまで飲み歩いていたので朝は 10 時に動開始、朝飯はキムさんお勧めの豆腐料理店で豆腐チゲ、朝から辛い鍋料理、美味しい朝飯でした。それから、ロッテデパートのデパ地下に土産の買出しへ、明日の朝出発前に受取る土産のキムチを予約してから、漢江の奇跡といわれているリバーサイドを訪れました。漢江は思っていた以上の大河で、高速道路の老朽化に伴い高架橋の撤去と親水公園の建設で自然を復元した話が有名、東京の日本橋と比較されているところです。1時間の漢江クルーズを楽しみ、川面からのソウルの街並みを眺めました。その後市内へ戻り、南大門(ナンデモン)市場を散策、夕方、キムさんの写真展を訪れ、昨夜のキムさんの話を思い出しながら Faceの写真に見入り、最後の別れをしました。
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この夜も4日連夜の日韓交流、ソウル在住のキムさんの奥さんを交えて、学生街の新村(シンチョン)の焼き肉屋へ、韓国では焼き肉は一般的には豚肉とのこと、今宵の焼き肉は特別に牛肉の焼き肉、本場の最高の焼き肉を頂き、その後はカラオケバーで日本の歌を合唱しました。帰りは地下鉄を一つ手前で降り明洞の夜の街をさまよいソウル最後の夜を満喫しました。
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  ソウル 5 日目最終日、朝飯はホテル近くのお粥屋さんへ、タコキムチお粥が美味かった。ロッテデパート地下のキムチ屋さんで予約していたキムチを受け取り、タクシーで空港へ、仁川国際空港はかなり広い空港ですが、案内も丁寧で迷うこともなくチェックイン、好感度の高い空港でした。空港内のレストランで、キムチうどんとビールで乾杯、ティーウェイ航空成田空港行 15 時 15 分発 TW213 便でソウルを発ち、17 時 30 分定刻に成田空港に無事に帰りつきました。
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  現在の日韓関係はまさに旧日本軍従軍慰安婦問題、徴用工問題、最近の日本政府の韓国向けの輸出規制強化の問題等で混迷を極めていますが、今回の旅は、これまで韓国に対して思っていた私のイメージを一新する旅になりました。
今回の旅を契機に、事前に、秀吉の朝鮮征伐から明治維新後の日韓併合、李朝滅亡に至るまでの歴史を学び、独立記念館などを訪問したことにより、韓国の国民感情も多少は理解できるようになりました。
韓国はお隣の国ですが、それぞれの国民が互いの国と国との関りの歴史について知らないことが多いのが現状ではないかと思います。
お互いが歴史を知ることにより、問題解決の糸口がつかめるのではないでしょうか。政府同士の関係が冷え切っている今ほど、民間レベルの人と人との友情を育み、日韓交流を積み重ねていくことが大切なことだと思います。
  最後になりますが、キムさん、4日間お付き合い頂き大変有難うございました。ケニアに引き続き大変お世話になりました。菊池さん、今回も実に楽しい旅の機会を与えて頂き、感謝しています。
機会があれば、またこのような有意義な旅をご一緒したいものです。有難うございました。